みあげてごらん、空の、月を
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☆。.MOON考察 .。☆

サントラ発売もあって俺の中のMOON熱が再び燃焼中。
この名作を少しでも語りたいと思った。

ゲーム概要

どんな人にお勧めか

ネタバレ感想記(クリアした人だけ見て)


■ 概要

MOONは1997年にラブデリックから発売されたプレイステーション用リミックスアドベンチャーRPGである。
そのあまりにも独創性の高い作りから、好きな人はとことん好き、だめな人はとことんだめと言うかなり偏ったゲームに仕上がっている。
現在はプレイステーションザ・ベストとして2800円で発売中。

■ あらすじ

ある夏祭りの前日の事だった。
少年がいた。
少年は自分の部屋でゲーム機の電源を入れる。
ゲームの名前は「FakeMOON」発売されたばかりの大作RPGだ。
少年の目的は勇者を操って、世界にはびこるモンスターを倒し、月に住まうドラゴンに戦いを挑む事。
勇者は伝説の武具に身を固め、襲い掛かるモンスターを次々と倒していく。
そしてラストバトル。とうとう邪悪なドラゴンと対峙する勇者。
勇者の一撃がドラゴンをしとめようとしたその瞬間!
こら!テレビゲームばっかりやってないで、早く寝なさい。
お母さんに怒られてしまった。
少年はしぶしぶゲーム機の電源を切る。
パジャマに着替えて寝ようとしたその時、消したはずのテレビが突然ついた。
あれ?おかしいな。消したはずなのに‥
少年が首をかしげたその時、突然目の前にまばゆい閃光がほとばしる!
う、うわぁぁ〜〜・・・・
目の前に広がる、果てしない青空。そしてどこまでも落ちてゆく自分。
そう。彼はゲーム「FakeMOON」の世界に吸い込まれてしまったのだった。
MOONワールドに入り込んでしまった少年はそこで驚くべき事実を知る。
あれだけFakeMOONの世界で勇者を応援し、励ましてくれた町の人々が勇者の悪評をうわさしているではないか。
「勝手に人の家に上がりこんでタンスをあさるなんて‥」
「なにもしていない犬をおいかけまわしていたよ‥」
なにかおかしいぞ。勇者って正義の味方じゃないの?

■ 目的

勇者が罪の無いモンスターを殺し、月に住まうドラゴンと月の女王が危険にさらされている。
主人公は勇者に殺されたモンスターを生き返す事でラブを得る。
ラブ。
世の中にはさまざまなラブがある。
小さな頃の思い出。ありがとうという気持ち。人を好きになる心。
あれもラブ
これもラブ。
ラブの力は少年に力を与える。
少年はラブの力で月の女王を救えるか。
少年はラブの力で勇者を止められるか。
少年はラブの力で光の扉を開く事ができるだろうか。


■ どんな人にお勧めか。

・のんびり屋
 このゲームはとにかく時間がかかる。
 攻略方法がわかっても、1イベントを越すのに30分近く動かずに待つなんて事はザラにある。
 また、主人公の移動速度は他のゲームに比べ極端に遅い。
 その上序盤は時間制限がシビアで、セーブポイントである家に戻る前にタイムリミットがくると容赦なくゲームオーバーである。
 うろうろして、ヒントを見つけ、推理し、解決する。
 そんな流れが続くゲームなので、あせって攻略を急ぐ人には向いていない。
 また、攻略サイトを見てしまったり、ソフトと同時に攻略本を見るような人には特にお勧め出来ない。(攻略情報載せてる当ページが言うのもなんだが)

・マゾ
 このゲーム、サドとマゾ、どっちむきかといえば間違いなくマゾに向いている。
 わからないわからないと、うろうろして無駄なものをいっぱい見て、初めてこのゲームの本当のテーマに気がつける。
 攻略をスパスパっとやってしまう人には、手ごろな難易度のアドベンチャーRPGに見えることだろう。

・感動気質
 小さなことに感動して、じ〜んとしてしまう人には間違いなくお勧めする。
 劇的に感動するような、芝居じみたイベントこそ無いものの、心の奥にホロリと響くエピソードが随所にちりばめられている。

・根気の持ち主
 このゲームには、寝ると言う方法以外時間を早めることが出来ない。
 また、ごく一部(たこちゅうとめしべ)を除いて「ルーラ」的なワープも出来ない。
 そういったことを踏まえて、たとえば鳥かごに乗ってバリバリ島に行くには1日半かかる。
 このゲームの1時間は現実世界で言う30秒間とおよそ同等であるため、1日半=36時間=現実世界時間18分間を本当に何もせずに見ていなくてはならない。
 随所にイベントが挿入されながらの18分間ではあるが、プレイヤーの操作は一切受け付けない18分間である。
 ましてやこの手のイベント最長は4日半。1時間近くあなたはコントローラーを手放して、モニターを見つめられますか?
 その根気がないとこのゲームはつらいです。










〜〜〜〜〜注:ここより先はネタバレ地帯です。プレイ中の方、未プレイの方は見ないほうがいいかも。見ても意味わからんかも。〜〜〜〜〜














■ EDを終えての考察

 これを見た後、みんなは何を感じたんだろう。そんなことすら考えさせてしまうエンディングである。
 そもそもこれは「fakeMOON」というゲームの世界に吸い込まれた主人公が、その世界を救うために冒険する話である。
少年は旅をしながらの事実にたどり着く。(いや、プレイヤーによってはたどり着かないかもしれない)
 月に行くための方法として、王様は鳥に運んでもらう方法や花火で行く方法など、微笑ましいものばかりを考えていたが、大臣は勇者をこの世に住まわせるために「白羽の矢儀式」によっておばあちゃんの孫を白羽の矢で射抜いたのだ。
 それによりおばあちゃんの孫は事実上死亡。勇者として恐ろしげな甲冑に身を包み、ただひたすらモンスターを虐殺する存在となる。
 この物語、唯一の悪人として存在するのは勇者ではない。勇者を勝手に作り上げた大臣なのだ。
 少年と勇者。二人の目的は「月に行くこと」そしてその結果は解放か破滅か。
 二つの運命に縛られた二人の少年が月に行く。それがMOONに隠された第一の真実である。

 第2の真実は更に根が深い。
 MOONワールドの住人はそれぞれ悩みや疑問を抱えながら生きている。
それら住人からラブを得ることで主人公は成長していくのだが、ここに一つの問題がある。
 MOONワールドは所詮、プログラム上の世界でしかない。
 住人たちはプログラムされた通りの行動をとり、プログラムされたとおりに生きている。なぜか?決まっている。これはゲーステの「FakeMOON」というゲームだからだ。
 そのことについて疑問をもった住人が三人だけいる。ヨシダとヘイガー博士、そしてフローレンスだ。
 最もヨシダは「?」と思った程度で、具体的なことは何一つしていない。
 しかしシュタインヘイガー博士はその事について真剣に研究を重ねている。彼の研究室に散らばるさまざまなレポートの中には、MOONワールド全体をあらわした図のようなものもある。天と地に大きな大地があり、その間にはさまれるようにしてMOONワールドが存在する。と。
 これはゲーステに入ったDiskの図と考えて良いだろう。上下の大地は蓋と本体。そしてMOONワールドがゲームディスクだ。彼はこの世界の謎を解き明かしつつある中。ひょっとしたら自分はただのプログラムなのではないかという発想にまでたどり着いている。
 しかし、これより早くにフローレンスはきのこの森から実際に世界を行き来して、少年に警告すら浴びせてくる。
 ムーンワールドの中では人々は常に平等である。
 厳しい現実に戻っておまえは一体何をするのさ。と。
 フローレンスはMOONワールドが虚構であることを知りながら、少年に語るのだ。現実に戻っていいのかい?と。

 そしてクライマックス。このゲーム最大のキーワードとしての「扉」が登場する。
 ムーンワールドの住人が望むことは一つ。「扉を開く」事にある。
 終始一貫して「扉を開く」事が何なのかは詳しく語られない。
 ただ、そのイメージからプレイヤーは何かの「解放」を感じ取ることが出来る。
 月の女王をはじめとするMOONワールドの住人は扉による解放が出来るのは少年だけだと言う。
 少年はラブを集め、月に向かう。
 勇者はラブを捨て、月に向かう。

 そしてあのエンディングだ。

 月の龍、月の女王と出会い、少年はのラブの力で月の扉を開こうとする。
 しかし扉は開かない。
 ラブレベルがどれだけ上がっていようとも、どんなにプレイヤーがボタンを叩いても扉は決して開かない。
 そんな中、少年の月ロケットに隠れていた勇者が、少年に救われ月に移り住んだモンスターを次々と殺す。
 殺されたモンスターは今までのように死体になるのではなく、ICチップとなって地面に転がる。
 ここでいうICチップは「所詮こいつらはプログラムなんだ」という、悲しい象徴と受け止められる。
 勇者が魔法を唱え、剣を振るうたびにMOONワールドの住人たちは次々とチップとなって転がっていく。

 絶望する月の女王。悲しむドラゴン。そして切り殺される二人。
 少年を見守り、月へ導いた女王さえも、一枚のチップとなって転がる。
 勇者が最後の一太刀を少年に浴びせる。少年は消滅し、衣服だけがはらりと落ちる。
 そして少年の分身であった勇者も、鎧だけを残して消滅。そこで物語は終わる。
 少年の頭にMOONワールドの住人からの悲痛な叫びが聞こえる。声こそ多かれど、響く言葉はただ一つ。
 扉を開いて
 扉を開いて
 扉を開いて
 扉を開いて
 扉を
 こら!ゲームばっかりやってないで、早く寝なさい。
 母親の声に少年が正気に戻ると、そこはもう現実世界。
 転がるコントローラーと、稼動を続けるゲーステ。
 そして目の前のテレビ画面にこの一文。
 これがMOON最大最後の選択肢だ。

CONTINUE?
  YES
  NO

 KOWAは初プレイ時はここでYESを選んだ。
 選んでしまった。
 ラブレベルも最高値に達していなかったし、やり残した事さえ片付ければ扉は開くのだと思った。
 YESを選ぶと、少年はまたTVモニターに吸い込まれて消えた。そしてEND。
 その時気が付いた。
 これじゃあ同じじゃないか。自分もプログラムされたMOONワールドの住人と。
 プログラムの中をあくせく歩き回り、「攻略」しようとする人間が扉を開けるわけが無い。

 答えはNOだったのだ。

 思えばフローレンスの警告はこういった意味も含めていたのではないか。
 2度目の月ロケットに乗り込んだとき、そんな事すら考えた。
 扉を開く。
 それはゲームの世界の人間を解放すること。
 すなわち、プレイヤーである少年がゲームの世界から抜け出す事だったのだ。
 少年がムーンワールドにいる限り、勇者がもたらす破滅はすべて予定調和に含まれており、普遍のものである。
 それを打ち壊すために、月へ行くのだ。
 そして再び月の女王と対峙。
 開かない扉。
 迫る勇者。
 もう2度目に月に訪れた時は、月に降り立つ前から泣いた。
 前回YESを選んだのが申し訳なかった。
 みんなを解放しよう。
 自分を解放しよう。
 そしてCONTINUE画面。
 答えはNO。断じてNO!

 少年はゲーム機の電源を切り、部屋のドアを空けた。
 そして家中のドアと言うドアを開けた。
 窓と言う窓もすべて大きく開け放った。
 扉を開け。
 扉を閉ざし
 心を閉ざし
 ゲームばかりやってる少年の
 心の扉を開け放て!

 玄関のドアが大きく開く。
 外にはまばゆい風景。
 小鳥が鳴き、緑が揺れる。
 少年が心の扉を開いたその時。
 MOONワールドの光の扉も静かに開くのだった‥!
 恐ろしく挑戦的、かつ冒険的なテーマである。
 ゲームと言う媒体をもって、「ゲームばかりやってないで外で遊べ」と言っているような物だ。
 スタッフロールではクリスちゃんのMD「KERA-MA-GO」のフルバージョン「All WE Need IS Love」に乗せてMOONワールドの住人が現実世界のさまざまな場所に出かけている様子が描かれている。
 みな、解放されたのだ。FakeMoonの世界から。
 ラストは「MOONは発売中止になりました」の看板で幕。
 世の中にハッピーエンドは多々あれど、こういった部類の物語は少ない。
 近いものと言えば、「はてしない物語(著:ミヒャルエンデ)」の中で、幼心の君にバスチアンが名前を叫ぶシーンだろうか。
 最もバスチアンは逆にそこから物語の世界に吸い込まれていくのだけれど。現実世界の人間が心を開く事から始まるストーリーはこんな所からヒントを得ているのだろう。
 (「はてしない物語」を読んだことの無い人でも、この物語の映画版「ネバーエンディングストーリー」なら見た人は多いのでは)
 しかし、プレイヤーが何時間もかけてじっくりMOONワールドに浸ったからこそ、このエンディングには意味がある。
 ゲーム内容がどうしようもなかったら感情移入も出来ないだろうし、それこそ白けたままエンディングになってしまう。
 途中、さまざまなことを考えながらのプレイとなるが故、このエンディングは正しい終わり方となったわけだ。
 ここまでの世界観の構築を、最後にすべて真っ向から否定する形で打ち崩す事を前提で行ったラブデリックを高く評価したい。
 RPGを否定したRPG。
 それこそがMOONの姿なのだ。

 この後、少年は外の世界で様々な物を見て、さわり、体験するだろう。
 そこから少年は数多くの事を学び、成長していくだろう。
 その中には幾節ものドラマがあり、唄があり、喜びがあるだろう。
 けれどもそれは別のお話。またいつか別の機会に語ることにしよう。