この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから。
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ICO


この人の手を離さない。 僕の魂ごと離してしまう気がするから。


プレイステーション2発売されるや否や、各地の人間が悲鳴を上げるほど絶賛し、様々な賞を取得したにもかかわらず、ミリオンヒットにはなっていない不思議なゲーム「ICO」
KOWAもこの不思議な作品の魅力に惹かれた一人である。

今回はこのICOについてのレビューだ。


■ 概要
ICOは2001年にSCE(Sony Computer Entertainment Inc.)から発売されたプレイステーション2用アドベンチャーゲームである。
その幽玄さを感じさせる美麗なグラフィック表現と、常識の枠から外れた作りは広く海外にまで高く評価され、アメリカにおけるゲームのアカデミー賞的存在であるAIAS(The Academy of Interactive Arts and Sciences)には8部門と言う最多ノミネート。
http://www.interactive.org/index_html.html
ノミネートリストは以下の通り。
Console Action/Adventure Game of the Year
Console Game of the Year
Innovation in Console Gaming
Outstanding Achievement in Art Direction
Outstanding Achievement in Sound Design
Outstanding Achievement in Game Design
Outstanding Achievement in Character or Story Design
Game of the Year
更にはThe International Game Developers Association(国際ゲーム制作者団体)主催のGeme Developpers Choice Awardsにも最多6部門ノミネート。
ノミネートリストは以下の通り。
Game of the Year
Original Game Character of the Year
Excellence in Game Design
Excellence in Level Design
Excellence in Visual Arts
Game Innovation Spotlights
また、国内でも第6回 CESA GAME AWARDS特別賞に選ばれるなど、国境を越えて評価されている作品である。
2002年10月17日に「PS2ザ・ベスト」として3000円で再発売。
2003現在も好評発売中。


■あらすじ
 山奥に一つの村がありました。
 その村では、古くから伝わる言い伝えがありました。
「角の生えた男の子が生まれたら、その子は孤島のお城に、いけにえとして捧げなければならない」
 村人達は大変信心深かったので、この言い伝えを厳しく守りつづけていました。
 今日もまた一人、少年がいけにえとされるために大人たちに連れられて山奥の道を進みます。
 少年の名はイコ。
 イコは自分の運命を知っていました。
 この先自分が死ぬという事を知っていました。
 しかし、イコもまた村の言い伝えを信じていたので、決して騒いだり、暴れたりしませんでした。
 やがて視界が晴れると、そこには古い大きなお城がありました。
 大人達もイコも一言もしゃべりません。
 イコは祭壇の間にたどり着き、大きな棺に入れられました。
 棺のふたが閉まり、大人たちの足音が遠ざかります。

 イコは一人ぼっちになりました。

 暗闇の中で、イコは徐々に恐怖を覚えました。
 これから自分は、どれほどの時間をこの中で過ごすのだろう。
 よもや恐ろしい化け物が、自分を襲いにくるのだろうか。
 イコはだんだん、とても怖くなってきました。

 その時でした。とても大きな地震がお城を襲ったのは。

 恐怖に襲われ、パニックになるイコの棺は大きくひっくり返り、イコは祭壇に投げ出されました。
 誰もいない祭壇。静かに収まる地震。
 棺から放り出されたイコは、自分が自由になった事を知ります。
 そしてイコは、運命に抗うためにお城からの脱出を決意します。
 幾つもの部屋を抜け、長い長い階段を上り、脱出できる場所を探すイコの目の前に、不思議な光景が写りました。
 天井から下がる大きな檻の中に、一人の少女がうずくまっているではありませんか。
「そんなところで何をしているの? 今、下ろしてあげるよ」
 透き通るほど白い肌をした少女は、何かをつぶやくとイコにゆっくりと歩みより、手を差し出しました。


■目的
 少女を連れて、謎の城から脱出をする。
 イコは角の力で、多少高い所から飛び降りたり、何かにぶつかっても平気だが、少女はイコの手助けが無いとあまり多くのことは出来ない。
 また、イコは少女を狙う謎の「影」から少女を守らなければならない。
 少女を狙う影は何者か。
 少女は何故、あのような場所にいたのか。
 少女とイコは、分かり合えるのだろうか。
 少女と二人でイコは様々な謎を持つ城から脱出できるだろうか。


■どんな人にオススメか
・普段ゲームをしない人
 意外と普段ゲームなんかやらない人の方が好評価を下す事の多い当作品。
 難易度、プレイ時間ともに相当楽。柔軟に物事考えていけば、5〜6時間でクリア出来る作品である。
 よって、腰を据えてやるゲームが好き!という人にはむかないのかもしれない。
・「天空の城ラピュタ」みたいな作品が好きな人。
 そのまんまであるが、「不思議な少女と、それを守る勇気ある少年」の構図はもはや王道パターンとも言える。もちろん、王道から外れた個所があってこそ、オススメするわけだが。
・人を好きになった事がある人
 これもそのまんまである。
・感情移入しやすい人。
 主人公への思い入れが強ければ強いほど、ICOの魅力は素晴らしい物になるであろう。


■感想と考察。(ネタバレはありません)
 とても切ない気持ちにさせる作品である。
 押さえるべきポイントの一つとして、建築を学んだ人間が総指揮を取っているだけあって城の設計が恐ろしく緻密に出来ているという点がある。
 3D物にありがちな「それっぽいシーンになる場所の繋ぎ合わせ」ではなく、きちんと設計図から書き起こしている事がプレイしていて良く分かる。
 その恐ろしくもあり、また美しくもある城の中を、少女と少年がかける。
 少女(以下ヨルダ)の言葉はイコには通じない。
 イコの言葉も、ヨルダに通じているかは分からない。
 しかし、透き通るように儚げなヨルダの手を握る(R1ボタンを押す事で手を握る)と、ヨルダの鼓動がコントローラーにかすかに伝わる。とくん、とくんと。鼓動にあわせて振動するのだ。
 一度も会話らしい会話をしないまま、不思議とプレイヤーは「この子を守らなくてはならないんだ」という事を決意する。
 そこが不思議でしょうがないのだ。
 守れとも言われず、助けてくれとも言われず、ただヨルダの手をひき城を歩くうちに、不思議とプレイヤーはヨルダに対する「守ろう」という気持ちを抱くのだ。
 この気持ちを抱くに至るのは何故だろう。
 答えはおそらく、このゲームのシンプルな部分にある。
 昨今のRPGに良く見られる傾向だが、「最終目的」に対する希薄さがこのゲームには無い。
 ドラマティックなストーリーがあり、主人公や周りの人間が葛藤し、魔物と戦い、レベルを上げ、強い武器を手に入れて、あわよくば突然ミニゲームやらされて・・・と、数多くの事を一度にこなさなければいけないのが現状のRPGに良く見られる傾向だがICOは至ってシンプルだ。
「目の前にいる、この子を守りながらこの城を出よう」
 経験地も無い、体力ゲージも存在しない。アイテムメニューも無い。ゲームオーバー条件も二つ。高すぎる場所からの転落などによってイコが死んでしまうか、少女が謎の影に完全に取り込まれてしまうか。
 常に最終目的が側にいる。側にいて、イコを、プレイヤーを見つめている。
 プレイヤーは「さて、結局俺は何すればいいんだっけ」なんて考えなおす事は無い。
 常に目の前の少女を守りぬく。プレイヤーはそれだけを感じ取り常に実行していればよいのだから。
 そして、心地よいほどに見入ってしまう「絵」としての美しさがこのゲームにはある。
 すべてのシーン。といって問題は全く無いであろう、徹底されたデザインの美しさがある。
 そもそも、イコよりヨルダの方が背が高い。という部分にうなってしまう。
 自分より大きな少女の手をひいて、少年が歩く。少女を守るために。
 それだけで「絵」として完璧な構図なのだ。
 このビジュアル面に関しては、日本の公式サイトよりもヨーロッパの公式サイトのほうが分かり易いので是非そちらをご覧いただきたい。↓
http://www.icothegame.com/
 このサイトではムービーや音楽がダウンロードできる。
 それらを参照していただければ、ビジュアル面の美しさや、ヨルダのかもちだす儚さ。
 そしてケルティックな音楽に乗せた切ない雰囲気が十分に伝わると思われる。(しかし何故日本のサイトよりこっちの方が出来が良いのだろう)
 このゲームの製作者の元には「ずっと走りっぱなしでヨルダの手をひいていたら、だんだんとヨルダの手が冷たくなって来た」「終盤になるにつれて、イコとヨルダの親密性が上がっていくような気がした」「ヨルダが一生懸命走る姿がかわいそうに思えて、ずっとテクテク歩いていた」などの感想が多く寄せられたそうだ。
 AIキャラクターにこういった形で感情移入させると言うのは、凄い事だと思う。
 「○○のシーンに感動した」「××の場面で、誰々が言った台詞はかっこいいと思った」とは次元の違う話だ。第三者としてではない。当事者としてヨルダと言う少女をプレイヤーは感じ取っているのだから。
 現にKOWAもヨルダの手をひいている時は階段を走らずに歩いた方がいいな。とか実際にやっていた。
 感情移入のレベルが半端なく高いのがこのゲームの一番の魅力であろう。
 製作者側もそれを意図してか、随所に気配りを忘れていない。それらの中でもKOWAが特に感心したのはセーブポイントだ。
 ファイナルファンタジーなどのRPGに見られる手法では、セーブポイントは魔方陣のような物がフィールド上にあり、その上にたつことでセーブが出来る。ドラゴンクエストで言えば教会に行ってお祈りを捧げる事だ。
 前者と後者の決定的な違いは、随所にセーブポイントを設けたいがために分かり易い記号としてセーブポイントを儲けるか、世界観を大切にするためにお手軽感覚を無くしてプレイヤーに足を運んでもらうか。の二つである。
 ICOのセーブポイントはこれら二つの条件を同時に満たしていると言える。
 イコとヨルダは、お城の中にあるソファーに二人で座る事でセーブをするのだ。
 ちょっと一休み。という感覚でイコがソファーに腰掛ける。
 それを見たヨルダはゆっくりと近づいてきて、そっとイコの横に座る。
 そこで「セーブしますか?」と、なんとも落ち着いた音楽に乗せて尋ねられると言うわけだ。(KOWAはこの音楽がとても好きである)
 プレイした後、心地よい陶酔感を味わえるICO。その感覚は、じんわりと心に響く映画を鑑賞した後の心境に似ていると言えよう。


■メディアミックスについての補足
 現在週刊現代誌上において、宮部みゆき氏によってICOはノベライズ連載されている。
 これに対してのKOWAの主観的意見を言わせていただくのであれば、ICOがゲームと言う媒体を通して伝えたかった事を完全に無視した作品となっており、ICOの登場人物を使用した、全く別の冒険活劇になっているといっても全く差し支えない出来である。(41話まで読んでの感想なのでこの後どうなるかは知らないが)
 まあ確かにヨルダとイコが全くしゃべらないまま進んでいくゲームと同じではノベライズも何もあったものではないので、このような手法にならざるをえなかったと言う事は分かるが、ゲームとノベルは全く違う物。と捕らえた方が賢明のようである。(KOWAの中ではヨルダはああやっておしゃべりしないんだよォォ)
 決してつまらない作品ではない。むしろ完成度はなかなか高いと思う。だが、ゲームをプレイしてすぐに同じ感動を小説で!と早まるのには少し待ったをかけたいと思った。  個人的には単行本化が楽しみである。